検診異常
(高血圧・コレステロール・糖尿病)
健康診断で異常を指摘されたものを、そのまま放置してはいませんか?血圧が上がった、コレステロール・糖尿病の数値が悪くなった、という状況は早く治療を開始するかどうかで、その後の人生を大きく分ける事になります。
どうして高血圧・コレステロール・糖尿病の値を放置してはいけないの?
なぜこの3つがしつこくチェックされるのでしょうか。それはどれも「血管を傷つける」病気だからです。心臓や脳の血管に持続的なダメージが入り続けることで、ある日急に心筋梗塞・脳梗塞といった致命的な病気を引き起こすのです。臓器は血管の集合体なので、知らぬ間に腎臓の機能が悪化したり、血管が詰まり足が壊死するといった事も起こり得ます。
逆に早く治療を開始すれば、その後のダメージは大きく下げられます。薬によっては腎臓の機能を温存したり、心臓を保護してくれたりといった作用があるので、指摘されたら必ず一度は治療を受けるべきかどうか相談しましょう。
高血圧
なんで高血圧は良くないの?
血圧とは簡単に言ってしまえば「どれだけの力で血管を押しているか」です。強い力で押された血管には傷が入り、それを繰り返しているうちに中が詰まったり、最悪は破けて大出血する場合もあります。そういった変化が、脳・心臓・お腹で起こると脳出血・脳梗塞・心筋梗塞・動脈解離といった致命的な病気に突然なります。
また、腎臓の細かい血管も徐々に痛みます。腎臓の機能が限界を迎えると人工透析(週3日ベッドの上で4時間かけて血液を浄化する処置)をしなければ生命を維持できないのですが、人工透析となる原因の20%を高血圧が占めます。
若い頃は全く症状を出さないので危機感を持つのは難しいですが、高血圧を放置して50代で心筋梗塞をされたり、脳出血をされる方もいらっしゃいます。一度傷ついた血管を再生する薬はありません。毎日がベストの血管だと考えて、出来るだけ健康な血管を維持しましょう。
どれくらいの血圧がいいの?
高血圧の基準は各国のガイドラインによって少し違いがありますが、米国の心臓病学会は120mmHgを超えると少し高く、130mmHgを超えると高血圧としています。厳しい!と感じる基準ですが、これにはちゃんと理由があります。1万人近くの患者様のデータを分析すると、130〜139mmHgの血圧の人は、120mmHg未満の人より、心筋梗塞や血管が裂けるような病気で死亡する確率がなんと1.5倍もあることが分かったのです。
その他にも、上の血圧が20mmHg上昇すると、危険な病気で死亡するリスクが2倍も上昇することが報告されています。まさに高血圧は人間の体にとって、百害あって一利なしなのです。
なんで高血圧になるの?
ほとんどが「血管の老化」です。塩分を取りすぎると水分が血管の中に流れこんでくるため血管がパンパンになり、血圧があがり「老化」が早まります。その他にも、若くして高血圧になっている方には「血圧を上げるホルモン」が過剰になる病気が隠れている事もあるため外来で早めに相談しましょう。
血圧の薬は危険だと聞いたけど本当?飲み続けるの?
当然、過剰な薬で血圧を下げすぎると血流が全身に行き届かなくなるため、立ちくらみや失神などが増え、ひどいと脳梗塞を起こす可能性もゼロではありません。しかし、そういった状況は上の血圧が80mmHgを切るといった「やりすぎ」な場合や脳梗塞の直後などであって、元気な時に高い血圧を放置していい理由には決してなりません。
薬を飲む・増やすことに抵抗がある方も多いかと思いますが、血圧の薬によっては腎臓や心臓の負担を取って温存する作用もあるので、むしろ飲んだ方が体に良い場合がほとんどです。老化に無理やりあらがって長生きする、というイメージなので薬をやめると元に戻ります。生活習慣の変化などで血圧が下がれば中止も可能です。
出来るだけ自力で下げるには
減塩をするのが最も効果的です。薄味になるので塩分の入っていないコショウなどのスパイスで食事に彩りをつけましょう。
血圧が下がると宣伝されているものは必ずしも効果が検証されているわけではないので、数値が下がらないようでしたら薬での確実な治療を相談しましょう。
コレステロール異常
なんでコレステロールが高いと良くないの?
中性脂肪や悪玉コレステロール(LDL)が高いと、プラークを作ってしまい血管の中が詰まっていきます。これが脳で起これば脳梗塞、心臓でおこれば心筋梗塞となるので非常に危険です。特に高血圧やタバコなどで傷ついた箇所に染み込みやすいので、血圧が高い場合やタバコを吸っている場合は特に注意が必要です。
どれくらいの値が良いの?
悪玉コレステロールはリスクに応じた治療が推奨されます。最も厳しいのは心筋梗塞で治療を行った方々などで、LDLは70未満にして再発を防ぎます。全く何もリスクがない若い方は140未満が目標です。高血圧の方やタバコを吸っている、家族に脳卒中や心筋梗塞などをした人がいる方は、治療目標を年齢などに応じて100 or 120未満と設定していきます。
なんで中性脂肪やコレステロールが悪化するの?
遺伝的に高い場合もあり、その場合は薬での治療が非常に重要です。特にLDLが200を超えている場合や、ご家族も高いといった方は出来るだけ早めにご相談ください。その他にも喫煙・飲酒・脂っこい食生活・運動不足・ホルモンバランスの変化といった事でも数値は上昇します。
薬のリスクは?飲み続けるの?
LDLコレステロールを下げるスタチンという薬には筋肉を痛める副作用が出る場合がありますので、定期的な血液検査や診察が必要です。またスタチンを飲むことで糖尿病を少し発症しやすくなる、というリスクはありますが、基本的にはそれを上回るだけの治療メリットがあります。
体質的に高い方はやはり薬をやめると上昇しますが、食生活や運動習慣をかなり改善させることで薬を卒業できる方もいらっしゃいます。その場合も定期的な検診や採血検査が推奨されます。
出来るだけ自力で下げるには
食生活でいえば、飲酒を避け、油物を控える事が大切です。食事だけでは改善が難しいケースも多いので、週3~4回の数十分程度の少し息が上がる有酸素運動が推奨されます。
それでも高い方や運動が難しい、といった場合はやはり薬での治療をしておくのが無難かと思われます。
糖尿病
なんで糖尿病は良くないの?
尿に糖が漏れるだけかのような名前ですが、本質は血糖値が高いことで血管が痛むことにあります。腎臓や目の細い血管がどんどん痛むので、放置すると若年であっても腎臓が機能しなくなったり、失明に至ります。透析が必要となる原因のうち最大の40%を占めるのが糖尿病なのです。
さらに悪い事に、高血糖の状態はばい菌やウイルスに対しての免疫力も著しく低下させるので、感染症が重症化しやすかったり、血糖値が高いがゆえに手術を受けられないこともしばしばあります。
どれくらいの血糖値がいいの?
空腹時の血糖値が126mg/dLを超えたり、HbA1c(一ヶ月の血糖変化の目安)が6.5%となると糖尿病の診断となります。ざっくりした指標でいうと、HbA1cが6%を超えないように注意しましょう。
なんで糖尿病になるの?
人類の進化の過程では、食料がない時代の方が圧倒的に長かったので、食べ過ぎに対する体の防御機構は十分ではありません。そのため血糖値を上げるホルモンはたくさんあっても、下げるホルモンは膵臓から出るインスリンなどと限られています。血糖値が上がるたびに膵臓からインスリンを分泌して下げる、という流れを繰り返しているうちに膵臓が疲れて追いつかなくなることで発症するのが2型糖尿病で、これが一番多いパターンです。
1型糖尿病はウイルスなどの感染を引き金として、自分の膵臓を攻撃してしまう抗体が作られてしまい、膵臓がインスリンを出せなくなった状態です。この場合はほとんどの場合でインスリン注射が必要です。その他にもお酒で膵臓が弱ったり、膵臓にがんが出来たことでインスリンが枯渇する膵性糖尿病といった病態もあります。
薬のリスクは?飲み続けるの?
糖尿病の治療薬は新薬が次々に出ているため、細かい副作用は書ききれません。しかし、いずれも必ず起こるわけではなく、メリットを上回るほどひどい副作用はさほど多くありません。
どの薬剤を使用する場合も、血糖値が低い時に使うと低血糖となり、最悪命の危険もあるため動悸・冷や汗・意識の変化が出る場合はすぐに糖分を摂りましょう。薬をやめるとやはり血糖値は悪化しますが、食生活や運動習慣を改善させることで薬の量を減らせる場合があるので、一緒に治療方法を相談しましょう。
出来るだけ自力で下げるには
シンプルに言うと「食べすぎずしっかり運動する」、これだけです。甘いものは控えて、食べるもののカロリーをチェックしてみましょう。食べたカロリーより使ったカロリーが多ければ痩せるはずなので、運動量も増やしましょう。運動して筋肉を刺激することで、筋肉に糖を取り込む反応が強化され改善が見込めます。生活習慣を改善させてもHbA1cが悪化する場合はやはり薬での治療強化が推奨されます。